国立大学法人筑波技術大学 筑波技術大学は視覚障害者・聴覚障害者のための大学です。

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  • 2025年4月16日
  • メディア情報

茨城論壇で石原学長の連載が始まりました

2025年4月12日 土曜日、茨城新聞「茨城論壇」にて石原学長の連載1回目の記事が掲載されました。
連載は全6回、次回の掲載日は6月14日 土曜日の予定です。

掲載された記事を以下に転載しています。ぜひご覧ください。

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「茨城論壇」筑波技術大学長 石原 保志

 筑波技術大学はわが国で唯一の障害者のための国立大学です。世界的に見ても、障害者のための大学というのは数が少なく、
各国から見学や研修のための来訪があります。聴覚または、視覚に障害があることが学部レベルの入学要件となります。

 障害者を取り巻く社会は、多様性、公平性、包括性の方向で法制度や各種政策が整備されてきています。教育においては
インクルーシブ教育が推進され、一般の小中高校の中で学ぶ障害児者が増えています、そのような社会的趨勢(すうせい)の
中で、障害者だけを集めて教育する意義とは何か。

 これは障害の種類や程度にも関係するのですが、聴覚障害の場合は音声情報の授受、特に音声による会話に配慮が必要である
という実態があります。視覚障害の場合は、見る、読むことに社会的バリアーがあり、移動や学習に際してやはり配慮が必要と
なります。しかし同じ障害種の集団であれば、同一の教育的配慮(教育方法)を用いることで教育成果が上がるという効果があり
ます。

 例えば聴覚障害学生の集団であれば教員が手話と明瞭な音声(ゆっくり、はっきり話す)、視覚的教材(教材のスクリーン投影、
話す内容の資料を配布、キーワード等の板書)といった方法で授業内容を確実に伝えることができます。視覚障害であれば、
点字・触図による資料の配布、パソコンに表示された文字を音声に変換するスクリーンリーダーの活用、図や模型など見て理解
する教材の使用に際する付加情報の追加(教員による説明)で、内容理解を促すことができます。

 以下は今年度の入学式で私が入学生に伝えた事柄です。

 障害学生に対する教育環境は、他大学とは比べられないほど充実しています。少人数で、一人一人の障害特性、能力特性に
配慮した指導、支援を行います。
 本学以外の大学に行く聴覚、視覚障害者も大勢いますが、それらの大学から、障害学生支援の具体的方法や支援体制づくり
のノウハウを求められ、筑波技術大学は多くの大学にこれを提供しています。
 また企業等、障害者が働く組織や、小中高等学校、特別支援学校、そして公共機関に対しても障害者支援のツールや技術を
提供しています。このような大学で学ぶことを誇りに思い、勉学に励んでください。(中略)一方で、筑波技術大学は同じ障害が
ある学生が集うコミュニティーでもあります。本学でつくった仲間は、一生の友となるでしょう。
 皆さん一人一人、障害の程度や特性はさまざま。出身地方も全国にわたります。考え方も障害に対する意識も異なるでしょう。
 重要なことは、自分らしさを失わず、一方で多様な人、多様な考え方があることを知ることです。社会に出れば、より多様な
人々や思想に出会うでしょう。本学在学中の触れ合いや体験は、卒業後、修了後の生き方の基盤になります。学内外の活動に積
極的に参加して、様々な人とのふれあい、自分が働きかけることで環境がどう変わるのか、実験してみてください。
 多様性を認めながら、自分らしく生きる。(中略)自分を知る...自分らしさとは、学習や研究、そして体験を通して、自分自身
でつくり上げていくものです。そのためには、まず自分に自信を持つこと。
 障害はハンディ?いやいや、それを転じて自分の強みにするくらいの気構えを持ってください。(後略)
 (入学式式辞より抜粋)

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(広報室/2025年4月16日)