朝日小学生新聞2026年2月12日付4面 SDGsがわかる ともにいきる タイトル よりよい社会めざして行動、発信  障がいがある人も、ない人も、「だれ一人取り残さない社会」のため、筑波技術大学の学生たちが取り組んでいるのは教室の中での勉強だけではありません。障がいがあるからこそ分かること、できることを社会に直接、発信している学生たちを紹介します。(鷲尾達哉、奥苑貴世) 以下、記事本文 視覚障がいある子の塾 視覚障がいのある川本一輝さん(21歳)は、筑波技術大学保健科学部の3年生です。2024年に会社を立ち上げ、視覚障がいのある小中高生のためのオンライン学習塾を運営しています。 徳島県で生まれた川本さんは中学生のころから、経営の仕事に興味があったそうです。しかし、視覚障がいのある人の多くは、マッサージなどをする「あはき師」という職業についていました。「あはき師の仕事はすばらしいですが、自分には向いていないなと感じていました。将来の可能性を広げるために、大学進学を目指せる高校を選びました」 川本さんが進学したのは、東京の筑波大学附属視覚特別支援学校。点字の教科書以外に、さわって学べる教材もあるなど、視覚障がいのある学生が十分に学べる環境が整っていました。同じ障がいを持つ同年代の仲間と学び合う機会もありました。「意見交換する場が多く、切磋琢磨できました。また、寮生活だったので、自立した生活を送れたことも成長につながったと思います」 特性近い講師が学習指導 川本さんは、地方でくらす視覚障がいのある友人たちがこまっている、という声を聞きました。「自分に合う教材がなかったり、レベルの高い授業が受けられなかったりと、勉強したくても環境が整っていない」というのです。 「可能性を持った人に将来をあきらめてほしくない」と感じた川本さんは、大学進学後、24年に合同会社WillShineを立ち上げ、視覚障がいのある生徒に向けた一対一のオンライン学習塾・ブイリーチを始めました。オンライン塾なので、地方で学ぶ生徒も取り残しません。 利用する保護者からは、「目のみえる自分が、目のみえない子どもにどうやって勉強を教えたらいいのかわからない」という声も聞くそうです。ブイリーチの講師は、視覚障がいのある大学生。「点字を使っている生徒には同じく点字を使っている講師、弱視の子には弱視の講師など、生徒のみえ方(障がいの特性)に近い講師が担当することで、学習方法はもちろん、受験などの情報も指導できます」 個別面談した後に、点字や拡大文字、音声を読み上げるスクリーンリーダーなど、生徒のみえ方に合わせて授業や学習サポートに取り組んでいます。 また、「講師に給料を支払うことで、講師自身が自立した生活をできるしくみをつくりたい」という強い思いもあります。「自分がかせいだお金で生活する喜びを、多くの人に感じてほしいです」 将来、「仕事につながる力を育てる支援もできたら」と語る川本さん。障がいのある人たちの可能性が広がっていくように、取り組んでいくといいます。 川本さんの写真と紹介 川本一輝さん。2歳半から「弱視」とよばれる見えづらい障がいがあり、12歳のときに、光は感じられるものの、視力を失いました=2025年12月16日、茨城県つくば市 コラム こうすれば、空港はだれにでも使いやすく 耳がきこえない、きこえにくい人が空港を使うとき、こまることはどんなことだろう?産業技術学部総合デザイン学科の授業では、聴覚障がいのある学生たちが羽田空港(東京都)を訪れ、だれもが使いやすい「ユニバーサルデザイン」について調べました。課題を見つけ、新しい案も考えました。 例えば、手荷物などを調べる保安検査では細かい指示は職員の声かけやアナウンスが多く、きこえないと分からないことがあるといいます。そこで、検査場の近くにイラストや文字、手話動画で検査についてわかる「情報ステーション」を置くことを提案しました。 また「緊急時や忘れ物をしたときのための専用電話は、きこえない人には使えない」という気づきも。ビデオ通話や字幕の表示ができる画面のついた電話端末を考えました。どちらも別の授業でさらに発展させ、聴覚障がい者だけではなく、車いすの人や外国人にもわかりやすいデザインを考えました。小さな模型もつくりました。 去年12月には、学生たちが羽田空港や地方空港に関わる人たちへ調査結果を発表しました。空港をより安心、安全な場所にするための手がかりになりそうです。 授業を担当する先生の1人で、卒業生でもある松森果林さんは「障がいによるバリアー(かべ)があるとき、不満や怒りを伝えるだけではなく『どうすれば解決するか』を前向きに考えると、社会は変わります」と話しました。 以下、写真の説明 学生の発表の様子の写真 羽田空港のユニバーサルデザインについて発表する産業技術学部の学生=2025年12月15日、東京都大田区 学生たちが提案した模型の写真 電話の模型 緊急時などに使う画面のついた電話 情報ステーションの模型 保安検査の指示を分かりやすくする「情報ステーション」=どれも2025年12月15日、東京都大田区